日川。甲斐の国の素晴らしき渓流。そしてまさかの熊に遭遇。

関東圏にお住いのフライフィッシャーの方ならご存知の方も多いはずの、山梨県の日川は、上流域はおよそ15年前から放流をやめ、自然繁殖で生まれたアマゴやイワナが優雅に泳ぐ美しき渓流です。

(もちろん上流域はキャッチ&リリース区間となっていて魚たちを優しく見守っています。漁協の方(ペンションすずらんのご主人)曰く、放流しないことが、結果的に魚を増やすことを実現できたとの大変興味深いお話を伺いました。)

今回は、2020年7月中旬のある日、雨続きの合間をねらって訪れたこの素晴らしき日川で、熊に遭遇してしまった思い出深いフライフィッシング釣行記をご案内いたします。

入渓ポイントは日川支流の「滝沢」

国道20号線から県道218号線に入り、登山やハイキングでも有名な大菩薩嶺方面を目指して山道を登りますと、やがて「すずらん」というペンションがあります。

雨が続いていたこともあって、日川の本流はやや増水気味でポイントも潰れ気味。

上流域はまだ水が少ないだろうと向かいましたが、やる気スイッチ入るまであと一歩といったところ。

それならば支流はどうかと、今回はこの「ペンションすずらん」さんのすぐ下から、支流である「滝沢」に入りました。

水量はなんと、少ない感じ?なんで?不思議です。
(ペンションすずらんのご主人曰く、滝沢は伏流水の沢で、日頃から水が少なめで、雨が続いた時も変わらずのコンディションだそうです。そして、イワナたちは伏流水の地下水道を移動しているとのこと!イワナすごいですねー!)

この「滝沢」、以前から何度かお邪魔したことがありまして、素晴らしい渓相がお気に入りのマイフェイバリッドリバーです。
(何かこの沢は癒されるんですよねー。嫌な”気”がないというか。。)

入渓直後から、このような素晴らしい渓相が続きます。

マイナスイオンはぎゃらん

大きすぎず、小さすぎず、程良い川幅が続き、スペースもあってキャスティングに何ら問題はありません。

標高1400mはイワナの世界

「滝沢」にはイワナが生息しています。

すぐ下の本流域にはアマゴも生息しているのですが、私はこの「滝沢」ではイワナにしか出会ったことがありません。

支流のスタート地点は標高1400mなので、ちょうどアマゴが生息するエリアとの境目ではないかと勝手に考えています。

ここで生きるイワナたちはヤマトイワナの種で、アベレージサイズは15cmから25cmくらいです。

滝壺の底にはもっと大きな主がいらっしゃるとは思いますが。。

この「滝沢」はとにかく魚が濃く、ここぞというポイントでは必ずと言っていいほど反応があり、いろいろなフライパターンを試せる楽しみがあります。

#14のブラックパラシュートにも10cm未満のちびっこイワナがたびたび元気よく飛び出してきて、生態系の安定さを微笑ましく感じます。

目が悪いのでインジケーターのデカさ見逃してください!

まさかの熊に遭遇!

そろそろ15時になろうとした頃、あと一匹逢えたら帰ろうと思っていたところ、上の画像の綺麗な21cmが出てくれまして、そこで退渓すればよかったものを、欲が出てしまい、あと一匹!最後にと、ふたたび川を登り始めてしまったのです。

さほど登らずして、良さそうなポイントに出くわしましたので、呼吸を整え、本日の締めくくりとなるキャスティングを行いました。

フライは理想通りのポイントにフワリと着水。

次の瞬間、パッコン!と静かにやさしくフライを吸い込む魚体が現れました。

あまり暴れることもなく、素直にランディングネットに収まってくれたこちらも最後にふさわしい、なかなかの良形サイズ。

顔もなんとなく優しい感じで、撮影にもおとなしく対応してくれました。

そっと丁寧に川に戻します。

ありがとう、またね。

さて、帰ろうか。

ん?

気配を感じる。

嫌な予感。

前方約20m。

黒い塊。

歩いてる。

え?あら?デカっ!うっそー!

デカくて黒い塊は、とてもしなやかに、優雅に前方20mを横切って歩いている。

熊じゃーん!!ツキノワグマさん。オーマイガー!

デッカ!

絶対勝てない!

うっわー!どうしよう!

生まれて初めての熊遭遇、そして私、生まれて初めて腰を抜かす!

何もできない、動けない、声でない。

あわわわ。。

右手にフライロッド、左手にフライ持ったまま。。

熊さん、ゆっさゆさと進んでる。

ものすごくしなやかに。

頼む、お願い、こっち見ないで!

お願い!神様〜!

熊さん、多分こちらにとっくに気がついていたんだと思いますが、無視して過ぎ去ってくれました。

あわわわ。。

腰抜けたまま。

ここで走って逃げたら見つかって追いかけられるかもしれない。。

どうしよう、どうする?

背中に冷たい汗。

しばらくM字開脚腰抜かしポーズ。

右手にフライロッド、左手にフライ持ったまま。。

フライラインはダラダラに伸びている。。

ようやく我に返り、ゆっくりと後ずさり。

ダラダラのフライラインが石に、岩に引っかかる、リールは悲鳴をあげて(ギー!)、あぁ、、また少し戻らなきゃ。。

ズレるメガネ。。

カラカラの喉。

もう、遠くに行ったかな?

あわわわ。。

あわわわ。。

後ろを振り返りながら、川を降る。

居ない、うん、居ないよね。。

お願い、居ないでー!

冷たい汗びっしょり。

肩から指先まで鳥肌。。

林をかけわけスイミング。

また別の熊居たら。。。どうしよう。。

歩くこと数十分。(かなり駆け足)

見えた!ようやく林道に出れた。

ダッシュ!

何やってんだ俺?

熊に会ったんですよ!

そっか、念のため、もう一度振り返る。

居ない。

良かった。

ハァ、ハァ、、、ふ〜。。

道が見える、建物が見える、電線が見える。

戻れたよ、人間の世界へ。

良かった無事で。(泣きそう。。)

いやぁー、居ますね熊さん!ホントに焦りました。

熊撃退スプレーと、ナイフを買うことを心に誓いました。(ナイフで戦えないけど!)

皆さんもお気をつけくださいませ。

下の動画撮影の直後、前方に熊さんは現れました。涙

山に大切な何かを教わった、思い出に残る釣行でした

まさか、自分が熊に遭遇してしまうとは夢にも思っていませんでしたが、イワナが生息する場所というのは、当然熊も生息している場所であり、そこに我々人間がお邪魔させていただいているわけですね。

分かってはいたのですが、あと一匹などと欲を出してしまったり、完全に自分に”おごり”がありました。

深く反省します。

今回の釣行で、山から大切な何かを教わりました。

山は美しく、清らかで、そして怖い場所。

そのことを改めて教えてくれた山の神様に感謝します。


やっとの思いで、いつも車を停めさせていただいているペンションすずらんさんに到着。

日川渓流マスターでもある、ご主人と気さくな息子さんに熊遭遇のことを報告すると、今年は熊多いんですよとのこと。

また、はち合わせや、子連れ、繁殖期などは危険ですが、基本的には向こうから逃げていくとのことでした。

ほんとに〜??こわっ!



今回も最後までご覧いただき、ありがとうございました。

[affi id=62]

まさしくこのシルエット。。

[affi id=60]

-フライフィッシング
-

© 2023 SURFMAN.T Powered by AFFINGER5